使い勝手の悪い端末は使いようがない

電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退 - ITmedia NEWS

実は??Bookは発売前から非常に注目していた。発売されたその日、新宿の紀伊国屋書店で実物展示があると聞いて仕事帰りに見に行ったものだ。

しかし、実物を見てがっかりしたのを覚えている。当時すでにTFT液晶が主流となる中、??Bookの液晶は見るに堪えない画質だった。モノクロ8階調という制約もあるが、なんというか全体的に見栄えしなかったのを覚えている。??Bookの液晶は特殊な液晶で、画素情報がメモリーされるため、ずっと通電しておかなくても絵が表示され続けると言うものだった。そのおかげでページの切り替わりのみで電力を消費するエコ設計で電池の持ちがよいという特性があった。ただし、画質はイマイチ、という。

「専用端末の大きさや重さがユーザーに受け入れていただけなかったのだろう」などと書かれているが、べつに大きさと重さは気にならなかった。しかし、なんというか本体の素材というか、凄くチープな印象を受ける素材、チープな印象を受ける液晶の画質だったのを覚えている。ま、しかしそれすら実は重要な欠点ではなかったのだけど。

一番の問題が、その使い道のなさである。

確か基本的には著作権保護技術(CPRM)に対応したSDカードでなくては使えなくて、自分で作ったファイルを表示することは許さぬ、という作りだった。唯一許されるファイル形式はtxt形式のファイルのみという仕様だったかと思う。

要するに公式の電子書籍以外はまずなにも表示できないという厳しい制約があった。そのため、正に本を読む以外の副次的な利用用途がない使えない端末だったのである。

Nintendo DSPSPのようなポータブル機は、その利用用途の広さというのが重要に思う。Nintendo DSの爆発的なヒットは、それがゲーム機としての端末にとどまらない利用用途の広さがあったことだろう。脳トレのようなシリアスゲームを搭載できる端末として非常に新しい端末だった。二つの液晶モニタ、タッチパネル、マイク、無線通信といったこのスペックは、ビジネスツールを搭載するための端末としても注目に値する。

一方の??Bookは電子書籍を読む以外の利用法は皆無だったし、その上コンテンツも少なかったのだから魅力も皆無だった。これがせめてHTMLの表示とかできたならまだ利用方法は考えられたのに。PDA以上に用途に制限がある中では工夫してまで使ってやろうという気さえ起こさせないものだった。

今でも汎用のポータブルな表示媒体というのは需要があろう。??Bookのような大きめのサイズで2面の表示領域を持ち、タッチパネルでのUIを備え、多少のプログラムが動かせて通信も行える、つまるところ携帯電話のような機能性を持たせた端末があったなら…。ハッカー垂涎の端末となるように思う。

そして、その地位を手にするのは今のところiPhoneのようだ。この使えそうな端末はそのガードをハックしてでも使い倒しなくなる魅力にあふれている。