霊長類の群れ - ”improve it!”にて群れをつくらない類人猿ってどんなのがいるの? - プログラマーの脳みその問いに丁寧に答えていただいたので、私の不理解だった部分も修正しておく。
まず、論点として類人猿で群れを作らないものは何か?という点だが、
類人猿の中では最も単独性が強く、グルーミングや遊びなどの社会交渉を行う頻度は、活動時間の1%以下である。しかし完全な単独性ではなく、3-7頭が同時に同じ木で採食したり、連れだって移動することもあり、緩やかなつながりをもつ社会を形成していると考えられている。
オランウータン - Wikipedia
とあるようで、もっとも単独性の強いとされるオランウータンですら「完全な単独性ではなく」とあり、少なからず社会性を持っている、と私は解釈したわけだが、群れというのは微妙ではないかという指摘もブクマで頂いた。確かにまったく群れていないともいえないが、群れともいいにくいような微妙な生態のようにうかがえる。
ゴリラのオス
あと、ゴリラも一つの群れにはおとなのオスは一匹のみなのでこの文脈での群れとは違うんじゃないかなーと。
そう、どちらかというと「類人猿は皆群れを作るし」よりも「サルのオスというのは順位付けを行うようだ」の方が気になっていたんです。
なので、文章の流れは「類人猿は群れをなす」→「その中でオスは順位付けを行う」となっているのに「群れ」の方にだけ反応するのは間違いでしたね。
霊長類の群れ - ”improve it!”
の指摘部分は確かにもっともで、
群れは1頭のシルバーバックを中心に、数頭のメス、そして子供達から構成されている。
ゴリラ - Wikipedia
という部分を私は見落としており、ゴリラの群れにおいては群れの中でのオスの順位というのは存在し得ないというのは指摘のとおりである。
ニホンザル・チンパンジーの順位について
群れのオスの間に明確な順位付けはチンパンジーやニホンザルで見られるますが、たしか他の霊長類ではそうはっきりと見られないのではなかったかと思います(うろ覚え[要出典])。また、ニホンザルの順位付けやはっきりとした社会構造も野生の群れでは餌付けされた群れほどはっきりとしないという研究もあったように思います(うろ覚え[要出典])。
霊長類の群れ - ”improve it!”
この点についてはマウンティングはヒトのオスの本能 - プログラマーの脳みそでは、以下の文を引用して言及している。
基本的には、チンパンジーのオス間にはニホンザルなどと同様の順位序列が存在する。オトナオスはワカモノオスより優位である。ただし、オトナオス間では、できるだけ優劣を曖昧にしておこうとする傾向がある。一般的には、アルファ、高順位、中順位、低順位という順位区分をすれば、その階層間での優劣は明確に判断できることが多い。
チンパンジーの社会
グループ内での順位付けは曖昧だが、グループ間(階層間と表現されている)での順位は明確である、と読み取れると思うのだがいかがだろうか。京都大学人類進化論研究室のサイトなので情報としては信頼できると考えている。
メスの順位について
一方でサルのメスには順位付けがないと考えているようですがこれも疑問です。
女性側でも順位付けのような行動はあるであろうが、男性ほどヒエラルキーに囚われてはいない。このあたりもサルと同じように思える。
ゴリラをはじめとする一夫多妻の種、またチンパンジーやニホンザルなどでもメスにも順位がみられるはずです。
霊長類の群れ - ”improve it!”
この点は誤解があると思う。表現が分かりにかったかもしれず申し訳ないのだが「男性ほど」と表現しているとおり、比較的順位付けが弱いということを言おうとしていた。「順位付けのような行動はあるであろうが」と順位付けを認める発言をしている点をご理解いただきたい。
論旨の確認とその修正
本来の論旨としては、「オスがより優位に立とうとするのはサルのオスの本能ではないか、そしてヒトもサルの一種で同様の本能を持つのではないか」という話であった。
そこに、群れの中で順位を持つ、というのは、ゴリラに見られるようなオス1匹とメス+子供という群れを成す存在によって、反例が示された。
ゴリラにおいては群れを持つこと自体が優位であるわけで、群れ内での順位はなくとも、群れ外のオスとの順位というか、格差のある社会を構成しているわけで、ゴリラにおいてオスが優劣を競う本能を持つことを否定するものではない。
群れを作るといえるか微妙だとされたオランウータンはどうか。
オランウータンは大人のオスが社会的地位に応じて、形態を大きく変えるという生態を持つ。
オランウータンのオスの顔の両脇にある張り出し(でっぱり)は「フランジ(Flange)」と呼ばれている(別名Cheek-Pad、頬だこ)。フランジは強いオスの「しるし」で、弱いオスは何歳になってもフランジが大きくならない。しかしひとたび強いオス(フランジがあるオス)がいなくなると、フランジのないオス(アンフランジ)が急激にフランジを発達させて、1年以内にフランジのあるオスに変わってしまう。
オランウータン - Wikipedia
オランウータンに関しては、オスに順位の争いがあることがはっきりしているようだ。
そもそも本能とはなんでしょうね
霊長類の群れ - ”improve it!”
これはこの議題では重要な話で、
本能(ほんのう)とは、動物(人間を含む)が生まれつき持っていると想定されている、ある行動へと駆り立てる性質のことを指す。
本能 - Wikipedia
とあるわけだが、これが人間となると難しい。生存しようというのは生物の基本的な本能だと思うが*1、人間は意志でもってそれを覆せてしまうのだから。
ヒトの場合、特別な訓練がない状況下で自然に観察される行為とするより仕方がないのではないだろうか。私が少年の集団を取り上げたのは、訓練によって行動が歪になる影響を排して自然な姿を想像しやすかろうと考えたからである。
追記
ブクマにて引用元のサイトへのリンクが誤っているとの指摘を頂いた。ご指摘感謝。
誤っていたリンクは修正した。
*1:繁殖が生存に勝るとは思う。繁殖行動を行うために死をいとわないというのは生物では多数みられるし、繁殖直後に死を迎える生物も多数いる。繁殖を第一に、繁殖までの生存を第二においた生物が、長きの生存競争で生き抜いたといえるのではないだろうか