よくわからないなら専門家にまかせろの危険性

3日で分かる〜みたいな書籍が後を絶えないことから見ても、世の中には「分かりやすく書いてさえあれば」たちどころに理解できる魔法のショートカットがある信仰が根強いと思う。


何かを理解するためには、その前提知識をまず理解しておく必要がある。
足し算をマスターせずに、いきなり掛け算とかちょっと無謀。四則演算できないのに方程式とか無理。

そんなわけで、理解するには前提を抑える必要があり、地味に勉強しろとうんざりするような事実をいやいやながら受け入れざるを得ない。


で、だ。

目の前に解決の難しい課題が転がっていたとする。素人考えではどうにもできないようなこと。
そうしたときに、よくわからないなら専門家に判断してもらうというのはアリなのだが、その専門家の言うことが正しいのかを判断することは難しい。

なんせ、わからないから専門家に聞いているんだ。答えが正しいかわからないが信じるしかないというのが実情だろう。*1
なので、人とか機関とかの権威をもってその担保とするということが一般には行われる。だから、オカルトに走る大学教授とかいると困る。権威を変な方向に使われてしまう。

近年はインターネットによって情報が容易に検索できるようになった。「この人どうなん?」ってのが簡単に調べることができる。んで、困るのは「あの学者はインチキだ」という嘘の情報があった場合。もう何を信じていいのかわからなくなる。


こうした消費者心理を踏まえた上で、IT業界と言う専門技術を提供する業界を考えてみると、辛い。
東証1部上場企業の大手SIerの失敗談的な話題があふれかえっているわけだ。

「うちは大丈夫です」ってのをどうやって伝えるのだろうか。
大手企業だからという権威による担保を否定されているのだ。

そして、「こういう理由で大丈夫」の根拠を理解するには、理解できるための前提を顧客側が持っていなければならない。ITに疎い顧客だったら大丈夫の根拠をそもそも理解されないことだろう。

それでも「とにかく私を信じていればシステムは無事完成しますよ」とでも言えと?それを顧客に信じてもらえと?


ともすれば、傍から見るとインチキなオカルトと区別がつかないのである。どうしたものか。

*1:答えの導出は難しいが、検証は簡単というタイプの問題も世の中にはあるけどね。数学だと因数分解とか顕著。プログラムもコードを書くのは難しいけど、動かして結果を確認するのは容易。