奴隷商人の価値観

SI屋の経営陣が技術の空洞化に気づかない理由 - プログラマーの脳みそにはいくつか反応を頂いた。

専門分化された技術分野では「技術力がある人を知ってる」もお金になるってことじゃなく?「うちは技術力があります」=「うちは技術力を提供できます」というか。気づいてないことはないと思う。

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傭兵を会社の戦力と誤認している場合、お金の流れすら見ていないまったくダメ経営陣だよねこれ。でもさすがに経営陣がそこまで無頓着とも思えないから、そうじゃない部分を自分たちの力として誇っているんだろうなあとは思うんだけど。もちろん、現場から見てその誇りが違和感バリバリであることだろうけど。

傭兵が自由に動くことで戦局が打開されることはまれでは? - novtan別館

 これらの意見に対しては、奴隷商人的な頭数いくらの人月商売を旨としている経営者は、1人月分以上の価値を解さないという事象を考えていただきたい。ある程度の規模のプロジェクト全体のアーキテクチャを選定できるような人材がいたとしても、全体の作業工数や教育などの側面で「1人月以上の働き」をするという価値を解さず、1人月分の労働力の下請けとしか認識しないという経営者を考えて欲しい。

 発想力に優れる経営者であれば、システムを構築できる人材を確保したならば、その人材にシステムを作らせて新たなビジネスモデルを模索し、投資するようなことを考えたりもするだろう。奴隷商人的な人材派遣もどきの中請けIT屋というのは人はあくまで1人月分の工数としか見ていない。1人月分の働きをできる程度のプログラマ・SEをもって「わが社の優秀な人材」と言っているのを聞いていると、そういう見方しかしていないのだなということが分かる。

 3年程度の実務を経験して、ひと通りの作業ができるようになったら1人前で、それ以上の技術はさして価値を持つとは考えていない、もしくは、それ以上の技術を計測できないのではないだろうか。スキルシート(笑)の評価欄の杜撰さを見てもある程度以上の技術は理解不能だから、人月単価交渉にも使えないし意味がないと思っているのではないか。

 今のフレームワークを設計するというような案件で増員の話があがったわけだが、中請け会社は相手が納得する技術者を提示できなかった。「業務の開発をそこそこにこなせる技術者」では高度な設計技能を求められた時に対応できない。元請けのアーキテクトとは「マルチスレッドのプログラム書けるような技術者っていませんか?」「心当たりないですねぇ。自分らで書くしかないんじゃないですか?」なんて会話をしていたのだけど、実際、そういう技術者を提示できる奴隷商人は稀だろう。

 向こうの評価としてはあくまで1人月を上限としているのだから、プロジェクトの成否はある意味運任せと言える。それでも、デスマーチプロジェクトを時間契約で請け負って大儲けとかそんな話を聞くから、経営的なことはちゃんとやっていると言えよう。プロジェクトの成否じゃなくて食いっぱぐれない契約を取り付けるという意味で、営業・経営はちゃんとやれている会社と評価している。

直接必要な人材を自社で抱えている必要自体はなくて、

1. プロジェクト完遂の為にどんな人材がどれくらい必要か判断する程度の能力
2. 必要と判断された人材を確保する程度の能力

があればかまわないとは思うけど、
自社の空洞化に気付いてないってことは、2を意識的にできていない、
成功したプロジェクトにおいて必要な人材が確保出来たのはたまたま、
ってことだから大変危険。

SI屋にとって問題なのは技術の空洞化ではなくそれに気付かないこと - 文殊堂

 傭兵を必要に応じて招集できるなら、会社としてはそれはそれでいいと思う。ただ、先に挙げたように技術者に対し、1人月分という評価までしかできない会社なので2を意識的に出来ていないということだろう。件の会社のスキルシートに経験したフレームワークの記載欄はない。「XXフレームワークを採用した案件をやるんだけど、やれる人いない?」と言われた時に営業さんは資料から人を探せていない。その段になって聞いて回ってるような有様で、後になってから「それなら経験ありますよ。あ、もう別の未経験者をアサインしたんですか、そうですか」みたいなやりとりも。

 もっとも、あちこちの会社を渡り歩いてきたが、技術を先回りしてスキルシートに評価欄を設けるような会社なんてのは見たことがない。奴隷商人的なIT屋だとJavaとかC#とか大雑把な言語レベルでしか技術者を把握していないのが一般的であるように思う。営業や経営層が技術に明るくないと難しいのだろう。

常備のプロ化した軍隊は政策や皇帝の継承に関与し大きな災いを為したと書かれています...
マキャベリがプロの軍隊を嫌ったのは
当時のイタリアの軍の主力だった傭兵隊のひどさからなのですが

(中略)

当時の傭兵隊に中には...
最後は雇い主を追い払って領土を占拠してしまう者まで現れています...

SI業界の未来 - @katzchang.contexts

はとても示唆深い。

 技術志向で独立した会社は虎視眈々と奴隷商人的会社の乗っ取りを狙っているかもしれない。そのための布石としてOJTの新人教育を快く受けたり、無償で勉強会を開いたりしているかもしれない。ゆめゆめ用心召されよ。