面接というのは、ある種のチューリングテストのような代物で、僕らはあるレベルの知性を持っているかを判別される。*1このテストにマルコフ連鎖のように用語に対する解答パターンを用意して臨むことでクリアしようというのが無謀な試みであることはほどなくわかることだろう。大学受験のようなペーパーテストをクリアできたからといって、いつまでもテストさえクリアできれば実態なんてどうでもいいなんて世の中を舐めていると辛酸を舐めることになってしまう。*2
「無精で短気で傲慢なプログラマ 技術者・SE・プログラマ面接時の技術的な質問事項で挙げられている問題に対して、全部答えを用意して暗記すればいいじゃん」
「お前頭いいな」
そう言って面接に挑んだ二人は、翌日青冷めた表情をしていた。
そんな単純な方法で挑んだところで、面接官にはすぐに化けの皮をはがされてしまう。一問一答であればマルコフ連鎖的な丸暗記でもチューリングテストをクリアできるかもしれないけど、連続した受け答えをするとすぐに答えれなくなって「こいつ、わかっていないな」と看破されてしまう。
「じゃぁ、組み合わせも網羅すればいいじゃないか」
「お前頭いいな」
翌日二人は膨大な組み合わせを前にあきらめることにしたと言っていた。これがAIを作るときに遭遇する次元の悪魔*3ってやつだ。
結局のところ、インチキして面接官というチューリングテストをクリアするうまい手立てなどなく、真に求められる知性を身につけるより仕方がないみたいだね。適当な頻度でスペルミスをすることでチューリングテストをクリアしようなどという裏口は通じないってことだ。*4
外から見た業界基準
まず、そもそもウェブ開発の技能がコモディティ化して、極端な言い方をすれば誰でも出来ることになったために、独立した需要としては存在しなくなったという可能性がある。
http://sourceforge.jp/magazine/09/02/23/1044247
この意見に頷ける技術者は少ないだろう。「ウェブ開発が誰にでもできるだって?」そういぶかしがる人もおおいんじゃないかな。
誰でも出来るんだったら多岐にわたる技術を問うような面接は必要ないはずなのだけど、現にIT業界は技術ある人を求めている。なぜってそれは誰にでも出来ることじゃないからだよ。
現代の日本人の識字率は非常に高くて、99%の人は文章を読み書きすることができる。まぁ誰でも文章を読み書きできるわけだね。「文章を書く技能がコモディティ化して、小説なんて誰にでも書けるようになったんだよ」そう言ったら君は信じるかい?納得するかい?
誰にでも書ける程度の文章を期待するなら、誰に書かせてもいい。そしてそういう文章しか知らないならそれ以上も求めないかもしれない。それは「文章なんてその程度のもん」という侮りだ。だから、技術者はそう言われてしまったことに対して臍(ほぞ)を噛まなくてはならない。地団太を踏まなくてはならない。業界の外からは「誰でも作れる程度のウェブシステム」が普通だと思われて、そしてそれをdisられてるんだよ!
どうやってギークは生まれて来るの?
まるでコウノトリが運んでくるがごとく、ギークはどこからともなく生まれてくる。中途採用のための面接を乗り越えてくるギークがいる。ウェブシステムを侮っていた客の度肝を抜けるようなギークがいる。どうやったらそんな技能を身につけられるのだろう?
プログラミングをやるのは大手では難しい? - yvsu pron. yasで挙げられているような、教育をきっちりやっているよという会社は少なく、単なる頭数要因で社員を取っているような会社に入った日にはろくな教育なんて受けさせてもらえない。それでも「そういう仕事」の需要はそれなりにあるわけで、しばらくは飯を食えるけど伸び悩むと言うか行き詰まってしまうよね。
ギークの生まれ方ってのに絶対解なんてなくて、意外と普通に会社に入って良い師匠に当たったという人もいれば、師匠なんていなくて独学でひぃひぃ言いながらやってきた人もいる。ギーク需要はあるのに供給がされていない現状はなかなかマズくて、「ウェブシステムってそんなもんでしょ」的に侮られるぐらいにマズい。養成学校でも作って養殖ギークを育てるようなことをしないといけないんじゃないのかな。
そんなことを夢みて事業で何億当てたら学校作れるんだろう?とか考えながら僕は今日も電気羊を数えるんだ。
*1:人間をチューリングテストにかけるってのはある意味バカにしているように思うかもしれないけど、試験でやろうとしていることは結局のところあるレベルの知性をフィルタリング仕様と言う試みなのだから似たようなものだ :-P
*2:それが後になればなるほど取り返しがつかなくなる。代返とカンペではクリアできない世界のほうが多いよね
*3:外界の情報を組み合わせで処理しようとすると組み合わせ数が多すぎてコンピュータでも処理できないほどの量になる。10通りの組み合わせを12回選択するだけで組み合わせが1テラになるんだからやってられない。
*4:ローブナー賞という人工知能に与えられる賞の最初の受賞プログラムの受賞理由(少なくとも理由の一部)が、「人間らしいタイプミスを真似」できたからだそうだ。