はてブの客観性

 BBSやチャット、SNSなどによる対話では相応の同調圧力が発生するが、はてなブックマークではそれが弱いように思う。

 同調圧力をうける場合、

  1. 発言に先立って他の人の発言を確認すること

という大前提があると思う。というか、他人が何を言ったのかを全く知らない状態で、皆が同調圧力で口々に同じことを言うのだとすれば、それはもはやテレパシー的な何かを受信していることになる。ゆんゆん。

 対面の場合は圧力のもととなる相手から自分を分断することができないわけだけど、ネットの場合は一応離脱が自由なだけ同調圧力は弱い。集団レイプ事件みたいな対面での同調圧力だと手を汚さなければ自分が被害側に回るという恐怖があるだろうが、ネット上では意に反した行動を強要されることはなくて、その場を観測しつつもただ黙っていれば手を汚さずに済む。

 そうは言っても、BBSにせよチャットにせよ、時系列的な流れを確認しやすいようにできているわけで、空間と場所を共有するからこそ同調圧力がある程度、現実空間での対面状態ほどではないにせよ働くのではないだろうか。

 はてブの場合、BBSなどと比較して、システムの設計上、同調圧力をより受けにくい構成になっていると思う。

 ブックマークをする操作を思いなおしてみよう。Web上からブックマークする場合、ブックマークへの追加ページをひらき、URLをコピペする。

 ブックマークをしようと思った時点ではまだほかのはてブのコメントは見えていない。

 次の画面に遷移すると何人ブックマークしているのか、すでにつけられているタグは何なのかが表示されるので、おおよそどんなタグがつけられたのか程度の軽い事前情報をえることができる。しかし、ここでもまだ他の人のコメントは表示されない。

 この状態でコメントを書き込むわけだが、該当のページから一歩離れた場所であるから、そのページの空気と違う発言をして空気嫁と言われることもないのでコメントに際して該当ページの同調圧力を強く受けることもないのではないか。

 そして、ブックマークを完了したら他の人のコメントが表示される。

 この手順でブックマークするのであれば、「事前に他の人の発言を見ない」のでおよそ同調圧力を受けることはない。同調圧力を受けるとすれば、この結果画面を見てからコメントを修正するような使い方をするとか、はてダなどからまずこの画面を開き、ここからブックマーク作業を行うような使い方をしている必要がある。

 また、Firefoxはてブプラグインからブックマークする場合だと以下のような画面がポップアップする。

 プラグインからのブックマークの場合も「事前に他の人の発言を見ない」ことになる。もちろん、事前に確認して同調圧力をうけてからブックマークをすることもできるが、BBSなどでは他者の発言を見てからリアクションすることを想定してシステムが設計されているのに対し、はてブの場合はそもそもがブックマーク機能なのだからそのように設計されていない

 これが、ブックマーク時点で他の人の発言をみざるをえないようにシステム改修されたとしたら、現状よりも同調圧力を強く受けることになるだろう。

 はてブに対して「同調圧力が働く」を主張する場合、こうした事情を考慮しなければならない。BBSなどでの直接対話に比べてはてブ同調圧力は弱いと結論付けるのが自然に思える。一方的な非難を陰謀説で考えるのは筋が悪い - プログラマーの脳みそでは一方的な批判をされるような状況というのは、そもそもの主張が誤っていると考える方が自然だろうということを述べた。ここではてブというシステム上での同調圧力が他のシステムに比べて弱いとすれば、さらに「同調圧力によって一方的な批判を受けた」などの主張は根拠に乏しくなる。

 はてブネットイナゴ説はそういう意味で弱い。同調圧力が弱いからこそ論理的な正否判定に偏る傾向が強い。冷酷に、残酷に、裸の王様に「裸で何やってるの」と言っていると考える方が矛盾がない。

追記

 主張を簡単にまとめておくと

ぐらいなんだけど、コメントで指摘されたように、ホッテントリによって集客力を高める機能性を考えた場合、そこからの流入客はそれなりに同調圧力を受けていると考えるのが妥当だと思う。

 ホッテントリ時の集客と同調圧力については、もうちょっと考えてみる必要がありそう。