先日、非IT系の友人のパソコンが壊れたらしく、買い換えるのだが何を選べばいいのか?という相談を受けたのだけど、「ネット見るだけならEeePCでも十分だぜ」的なことを言ってやった。やれCPUは何がいいんだとか聞かれても説明に困る。Core2Duoのクロック周波数が低いけど性能どうなの?とかさ。
CPUのクロック周波数といえば、1990年代後半〜2000年代前半ぐらいまではIntelが「クロック周波数が高い=ハイスペック」というプレゼンを盛んにやってて、対AMDとのバトルを優位に進めようとしていた。Intelはクロック周波数というのが高ければいいんだよ!と、素人向けに製品を選ぶ尺度を与えた。この尺度は本当は正しくないのだけど、まったく嘘というわけではない。CPUを選ぶ際のスカウター*1をIntelは消費者に与えたのだ。ほら、うちのCPUのほうがクロック周波数高いでしょ、うちのを買いなさい、と。
2004年2月にPentium 4は3.4GHzに到達している。2006年7月27日にIntelがCore 2を出したとき、そのクロック周波数の低さに消費者は困惑した。同一アーキテクチャのCPU同士ならばクロック周波数が高ければそりゃぁ演算性能は高いさ。だけども、AMDのチップとIntelのチップをクロック周波数だけで比較できないように*2、Intel社のCPU同士と言えども、アーキテクチャの異なるPentium 4とCore 2はクロック数では性能を比較できない。Intelは自社で行った欺瞞に満ちたアピールのしっぺ返しを食らったわけだ。
そうはいってもそんなCPUのアーキテクチャ事情を熱心に耳を傾けるのは一部マニアに限られる。マニアではなくともアーキテクチャの違いによる性能の違いは理解できる程度に平易なこと*3だが、素人は理解しようと言う気がない。だからこそ、Intelが対AMDへのアピールとして「クロック周波数が高ければ性能がいい」という安易で正しくはないが「分かりやすい」指標を提示したのだし、効果はあった。効果がありすぎて自社の新アーキテクチャのCPUを売るのに困るぐらいに効果があった。
さて、くだんのスパコンの話題。スパコンの性能指標もCPUのクロック周波数に相当する、分かりやすく、そして誤った数値がある。そのひとつはLINPACKベンチマークのスコアだ。年2回発表されているスパコンTop500はこのスコアで決まっている。LINPACKのスコアによるランキングはスパコン性能指標のひとつに過ぎないが、素人目に非常に分かりやすい。事情を分かろうと言う気がない素人に説明するには非常に楽なシロモノだ。
あるいは別のスカウターにFLOPSというものもある。
FLOPS(フロップス、Floating point number Operations Per Second)はコンピュータの性能指標の一つ。1秒間に浮動小数点数演算が何回できるかという能力を理論的/実際的(実験的)に表したもののこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/FLOPS
これも素人目に分かりやすい。ちなみに日本が誇るスーパーコンピュータ、地球シミュレータは122T(テラ=10^12=兆)FLOPSだし、身近なPS3あたりは2T FLOPSだ。じゃぁ、PS3を60台ぐらい繋いだら地球シミュレータになるかと言えばならない。スカウターの数字ってのはそんなもんだよ。
でも、正しい数字を理解するのは面倒くさい。本当に面倒くさい。素人でも理解可能だけども面倒くさいからちゃんと理解しようと言う人はマニアに限られちゃうぐらい面倒くさい。ちゃんと説明するから聞いて!って言っても面倒くさいから聞いてくれないし、「一言で説明してよ」「一言で説明できないいろいろな事情で成り立ってるんです!」とかいうやり取りがされるぐらいに面倒くさい。
だから分かりやすい、でも嘘っぱちなスカウターの数字で「分かった気にさせる」ことが横行しちゃうんだよね。32bit CPUを2つ搭載している64bit級マシン*4とか、もう失笑モノだけど、そんなプレゼンで消費者にアピールすると、面倒くさがって分かろうという気のない素人を騙せるわけなんだもの。http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51529842.htmlみたいな記事が注目されるのもやむなしじゃないかな。