え?自分?無知に決まってるじゃないか

無知の知への考察がちょっと面白かった。

なぜならそれは、「私はあなたより物知りです」「無知の知を知っている時点であたなより優れています」という勝利宣言に他ならないからだ。

http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20081031/1225429787

*1

当然ながら、スキル「無知の知」を持って相手に勝利となる、なんてことはない。というか、無知の知なんてのは論理的思考を行うための通行証のようなスキルでしかない。まともな論客はみなこのスキルを持っている。


1元の評価軸での勝敗にとらわれている人を惑わすにはなかなか面白いネタだ。


RPGでも、戦士やら僧侶やら魔法使いやら、方向性の違いというものが当たり前のようにある。そして、その役割の違いというのは子供でも理解していることであろう。こうしたゲームを通じてでも我々は評価軸は多元だということを学ぶことができる。当然ながら実社会でも評価軸は多元だ。*2

自分が何を知っていて、そして何について無知なのかということを知るというのは、マウンティング*3のためのスキルではない。自分の成長余地を知るため、あるいは、人を尊敬するためのスキルと言える。

自分が無知な分野を正しく把握することは、自分自身の教育プランを考える上で重要な事柄である。自分が無知な部分こそ勉強するターゲットとなる。無知な部分を理解していると思いこんで無知なままその先に進むと近く論理が破たんする。


自分が理解している分野で必要以上に卑下する必要はない。むしろ嫌みだ。
そして、自分が理解していない分野では知識ある先達を素直にたたえればよい。


自分が無知な分野で、その知識を持つ先達を、ルサンチマンで持って貶めるようなことは無粋の極みだ*4。自分の無知を正しく把握するからこそ、評価軸が多元であることを知るからこそ、特定の軸において自分に勝る人間を素直に尊敬できるのである。

他の軸に自分の確たる拠点があるからこそ、人を讃えたからって自分が崩壊することはない。マウンティングに腐心しなくても、自我が保てる。


「あなたより優れています」というのが、総体という1元の評価軸になっているところが、この論のひっかけ部分だ。

*1:原文ママ。「あなたより優れています」のtypoだろう。

*2:このあたりをどうにも理解してくれない人もいる。むしろ1元での評価軸で考えると自分の得意分野を無効化されて辛いだろうに。どうも、ジャイアニズムで都合がいい時に都合が良い評価ルールを適用することでこれを解決している節がある。ルールが一貫していない。

*3:マウンティングはヒトのオスの本能 - プログラマーの脳みそあたりを参照。序列確認行為を揶揄してこう表現している。

*4:つまり、妬みからそのジャンルそのものが価値がないよね、と価値観を倒錯することで無効化しようとする試み。