サービスを出会い系とみなされないために

 「出会い系サイト規制法」、正式名称「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」がかなり酷くて、警察庁のページによれば

  1. この法律では、出会い系サイト事業を「インターネット異性紹介事業」と呼んでいます。
  2. 「インターネット異性紹介事業」とは、以下の4要件をすべて満たす事業をいいます。
    1. 面識のない異性との交際を希望する者(異性交際希望者といいます。)の求めに応じて、その者の異性交際に関する情報をインターネット上の電子掲示板に掲載するサービスを提供していること。
    2. 異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスであること。
    3. インターネット上の電子掲示板に掲載された情報を閲覧した異性交際希望者が、その情報を掲載した異性交際希望者と電子メール等を利用して相互に連絡することができるようにするサービスであること。
    4. 有償、無償を問わず、これらのサービスを反復継続して提供していること。
警察庁:あぶない!出会い系サイト

 なんだか、個人を識別できるページは何から何まで出会い系でしょっぴかれそうな勢いだ。法解釈についてはインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律等の解釈基準(pdf形式)が詳しい。これによれば、

(4) 「異性交際を希望する者の求めに応じ」とは、事業を行う者が、その「運営
方針」として、異性交際を希望する者の需要に応じて、すなわち異性交際を希
望する者を対象としてサービスを提供するという意味であり、個々の利用者が
実際にどのような意図をもって当該事業を利用しているかにはよらない。
事業を行う者の「運営方針」は、
○ 事業を行う者が示している規約やサイト名その他利用案内、告知等のサイ
ト上の記載等
○ サイトのシステム(例えば、書き込みをした者の性別を表示する機能の有
無等)
○ 利用者の規約等違反行為に対する事業を行う者の措置
等の事項から判断することとなる。
なお、異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的
で利用している実態がある場合でも、事業を行う者が異性交際を求める書き込
みの削除や書き込んだ者の利用停止措置を行っていれば、当該事業は、基本的
には「インターネット異性紹介事業」に該当しないが、当該書き込みを知りな
がら放置するなど、事業を行う者がその実態を許容していると認められるとき
は「インターネット異性紹介事業」に該当する場合がある。

とあるから、サービス上において性別を表明することを許容していると「インターネット異性紹介事業」とみなされる可能性がある。みなされないためには運営側が性に関する書き込みに対して相応の規制を敷かなければならないのだろう。アバター系システムにおいてアバターが性別を有する場合、広義に性別を表示する機能とみなされはしまいか。

 対策としては

  1. 異性交際目的での利用の禁止をうたい、相応の監視体制を敷く
  2. 性別にかかわる表現を排除する
  3. 個人を識別する機能性を排除する
  4. 未成年の利用を禁止する

といった方法が考えられる。監視体制を敷くことは運営側の固定費を爆発的に増やすことになるからよほどの収益体制を確立できているサービスでもなければ不可能だろう。性別欄の排除はともかくとしてMMORPGやあるいはアバター的なものは擬人化されたキャラクタを用いるのが常だし、性別を伴うのが通常だからアバターの性別をもって性別を表示する機能とみなされるとツライ。いくらなんでも世界は雌雄同体の世界を許容するほど性から解放されているとは思えない。

 個人を識別する機能性を排除したならば(9) 「相互に連絡することができるようにする役務」を放棄するのでおおよそ安全だとは思われるがコミュニケーションによる娯楽性を提供するようなサービスは全滅になってしまうから受け入れがたい。MMORPGなどを作るとおおよそ「インターネット異性紹介事業」とみなされてしまう危険があるように思う。

 「相互に連絡することができるようにする役務」に関しては

インターネット上の空間に、2人しか入れない仮想の
「個室」を設け、そこに入った2人の間だけでメールのやりとりをさせるツー
ショットチャット形式は、相互に連絡することができることからこれに含まれ
る。他方、公開された場でのチャットや、いわゆるレス方式(ウェブサイト上
で、書き込まれた情報に対する返答・意見が順次記載されていく方式)につい
ては、当事者間の1対1の通信ではないことからこれに当たらない。

とされ、簡易な通信機能でさえ異性交際の支援システムとみなされてしまう。*1

 そうなると、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」の「児童」の部分をどうにかするという方法論になってしまう。未成年はネットゲーム禁止。サービス提供側の自衛としては一番手っ取り早い。

*1:Skypeですら「インターネット異性紹介事業」になったりしないか、これ