風来のシレンに見るリスク管理

風来のシレンという、知る人は知っているコアゲーマー向けの名作がある。

コアゲーマー向けといったのは、このゲームはそのへんのRPGのように、時間をかけてLvさえ上げれば誰でもクリアできる、という生易しいゲームではないからだ。

このゲームをクリアするために必要なのは、プレーヤー自身のLvを上げることである。

http://d.hatena.ne.jp/tek_koc/20080623/1214183280http://d.hatena.ne.jp/hasidream/20080623/1214224482で取り上げられているが、風来のシレンというゲームによって学べることは多い。

私はこのゲームはリスク管理を学ぶものだと思う。

ひとつひとつの行動が、それぞれどの程度のリスクを持つのかを考え、最小となるように努力を重ねる。リスクというのは発生率×ことの大きさなのであるが、シレンにおけるリスクは単一ではない。プレーヤーは多数のリスクの合計値を勘案しながら行動を慎重に選び、行っていかなければならない。

シレンには行動回数を制限するリスクとして「満腹度」というものがある。行動するごとに満腹度は減っていき、0%まで減ると、今度はHPが減っていく。ついにはHPが0となり、餓死してしまう。満腹度を回復するには、道端に落ちているおにぎりなどの満腹度回復アイテムを消費しなければならない。

おにぎりの入手確率 × 回復量 よりも多くの行動をとると言うことは餓死のリスクを高める。シレンで基準となるのはこの餓死のリスクであり、餓死しないだけのターン数でフロアを進んでいかなければならない。

そして、数々の罠。罠は通常見えず、上を通過するか、手前で剣を振ることで発見できる。罠にかかるリスクを0にしようと思えば、行動が2倍になる。これは極端に餓死リスクを高める。そのため、罠にかかった際の被害の程度が回復可能であるならば、罠の存在可能性を無視して踏み出さねばならない。

逆に、今もし罠にかかれば死ぬ、という状況下では常に剣を振って罠を回避しなければならない。このあたりは自動車の「だろう運転」と「かもしれない運転」と同じ。HPが1になった時に、まさにビンゴで弓矢の罠を踏んでしまったりするものだ。

HPが1ならば、目の前の雑魚を倒すのさえ、空振りのない杖を使うなどの行動を選ばざるをえない。もし、攻撃がはずれたら、敵の攻撃で自分は死ぬ。それは取り返しのつかないことだ。取り返しのつかないことへの対処にはいくらコストをかけてもかけ過ぎということはない。

こうした箇所で運任せでプレイをするのか、それともリスクを考えるのかが、このゲームをクリアできるかできないかの分水嶺に思う。犯罪をなぜ犯してはならないかといえば、逮捕リスクが仮に1%だったとしても、その1%で決して取り返せないものを失うからだ。「捕まらなければいいんだよ、大丈夫、俺に限って捕まるなんてことはない」なんて考え方は、シレンの運任せのプレイと同じだ。そのリスクの大きさが許容できないなら、どんなに確率が小さくても手を出してはいけない。