生きるためのボーダーは存外低い

 生物の死亡率というと生まれた直後が最も高く、ある程度成長してしまえば低くなるというもの。もちろん天敵に捕食されるなどの事故で一瞬で死んでしまうこともあるのだけども、怪我をしても病気をしてもそれが即座にゲームオーバーというわけではない。生殖に関して言えばトップのオスが数十パーセントを独占するような例もあるようだけど、トップ以外はばたばたと死ぬわけではなくて生きるだけなら生きていられる。

 人間となると周囲の補助もあるので怪我や病気をした際も介護を受けれて、死亡率はそこまで上昇しない感じ。社会的に成功するのは難しくとも、生き延びるだけなら十億単位で成功しているわけだ。

ブラック企業もなかなかつぶれない

 企業と言うのも生物に似て生まれた直後が一番死亡率が高い。数年続いた会社と言うのは、生きる術を身につけた会社とも言える。企業後3年も経つと廃業率は低くなる。*1

 昨今の不景気で技術がろくにない奴隷商人型のIT企業は立ち行かなくなるのではないか、と予想していたのだけども存外しぶとく生き残っている。実際のところ案件は減ってるようで厳しくはあるようだが、次々に倒産と言うほどではない。企業が死ぬまでにはいくつか致命的なミスをしなければならないようだ。企業が生きるボーダーは存外低いようだ。

 とくにIT系の奴隷商人型企業と言うのは固定費なんてほとんどなくて、固定費的なモノといえば人件費。人件費も売りに出せている社員についていえばマイナスなんてことはまずないので、あまってる人を抱えさえしなければ死ぬ目には合わない。売れない社員をどんどん切り捨てれるならば奴隷商人型IT企業はまず死なない。そしてブラック企業はブラックだけに法なんか知ったことかと残業代を払わなかったり*2、不当解雇したりと保身に走るわけだ。

 奴隷商人型IT企業が本格的に立ち行かなくなるためには商習慣の変更が必要なのではないか。人月いくら計算の契約では奴隷商人型の企業のやり方と言うのは利益をあげるという目的においては正解で、効率的なものだと思う。もっとも企業の存在理由なんてのは稼ぐばかりではないので利益よりも優先するべき何かしらのコンセプトを持つ会社も沢山あることだろう。だが、そうした心意気の会社よりも奴隷商人型の会社の方に都合が良い商習慣となっている現実がある。ここのルール変更は大変だけれども、健全なシステム開発を望むなら生涯をかけて取り組むべき課題と言える。

 技術がない企業は躍進しないかもしれないが、存外死なないものだ。企業も生きるだけなら存外ボーダーは低いのかもしれない。

*1:参考:http://blog.g-up.com/shuns/?s=2&b=11305

*2:出向先の会社からは残業代込みで契約金を受け取り、社員には払わないことで丸儲け、というカラクリ。デスマーチでうはうはみたいな話になるから本気でデスマを防ごうと言う気がない